パレスチナ伝統刺しゅう
女性への支援
乳がんの早期発見と患者支援

ガザでは、女性の死亡率の第一位が乳がんです。しかし正しい知識がないために、いたずらに恐怖を抱いたり、患者さんへの偏見があったり、手術や抗がん剤治療への理解がないため離婚されたり、うつ状態になる女性がたくさんいます。またガザの中では抗がん剤治療や手術はできますが、放射線治療ができないため、ステージ4 の死亡率は7割近いと言われます。
こうした状況を変えるため、乳がんの早期発見と啓発、患者さんたちの支援を2016 年春から続け、以下のような活動を行っています。
活動概要
期間 | 2016年春~実施中 |
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場所 | パレスチナ・ガザ |

積極的な啓発活動

(テレビCMやラジオ等で約5万3千人以上の女性に乳がんの早期発見の重要性を訴えました)
●ガザの各地で、乳がんを正しく理解し、自分で早期発見するための講習会や家庭ミーティングを開催。すでに10,000人以上の女性たちが参加し、直接分かっているだけで7% の女性が検診を受けました。
●ラジオでは 6 種類の短い番組を155 回放送し、テレビ広告のビデオも作り放映しました。またガザでも多くの人が使っている携帯電話のショートメッセージ(SMS)を18,000人に送りました。パンフレットや小冊子なども合わせて1万部作成しました。
● 検査を受けるための費用を800人の女性に支援しました。そのうち8人に乳がんが見つかっています。
患者さんに寄り添う
● 乳がん治療中の 465人の女性たちに、治療費の一部補助、ソーシャルワーカーによる訪問、患者さん同士の交流、夫など家族の支援、ガザでは受けられない放射線治療をイスラエルで受けるための交通費補助、手術後の補正ブラジャー支援、治療中のウィッグ支援などを行っています。
●世界的な乳がんの日にあわせて、患者さん、医療関係者、NGO などが参加するイベントを開催し、対パレスチナ政府日本代表事務所の大久保所長も参加されました。この事業は、「国連人口計画」と当会が中心になり、ブレイジ難民キャンプのそばにある「女性保健センター(WHC)」、ガザの医療 NGO、病院、患者グループなどと連携した事業で、日本外務省の補助金を受けています。
●今後は、ガザの中の多くの医療機関との連携を強めて、疑いのある場合に精密検査をできるだけ早く受けられるようにする、各医療機関で患者さんのデータが共有できるようにする、などを進める予定です。
女性たちの声~女性保健センターで支援をしている人たち~
「乳がんの早期発見と患者と家族支援」
ガザの女性がおかれている現状と活動内容をご紹介いたします。
女性保健センター所長フェリアルさんと現在支援を受けているサミイラさんとソマイヤさんにお話を伺うことができました。
乳がんの早期発見と患者支援活動(YouTube 9分11秒)
ハヤさん(40 代)
乳がんだと診断されたのは2015年12月です。違和感があり大きな病院に行きました。そこでは乳腺線維症と診断されましたが不安は消えず、女性保健センター(WHC)に来たのです。検査の結果乳がんと分かり、1週間後には治療が始まりました。本当に落ち込んだのは最初の1週間で、その後は夫とWHCに通い始め、治療や薬、栄養、またカウンセリングを受けるようになりました。WHCは検診費用、薬やビタミン剤なども提供してくれます。
治療で一番つらかったのは化学療法でした。治療そのものと副作用で髪を失い、身体的にも精神的にも大変でした。また病院での待ち時間やシステムも大きな負担となりました。
ショックを乗り越え受け入れられるようになったのはWHCによるサポートが一番大きかったです。コーディネーター、担当医、他のスタッフも皆精神的に支えてくれました。最初はショックを受けていた夫もいまでは支えてくれていますが、私がショックを乗り越えるのに必要な99%はWHCからもらい、1%は夫と子どもたちからもらったと思います。
サウサンさん(50 代)
乳がんが見つかったのは2004年で、授乳していた時におかしいと思ったからです。乳がんだと診断されて乳房の切除手術を行いました。その日、夫から「もうお前は女性でも妻でもない」と離婚を告げられ、私と6人の子どもを置いて出ていってしまいました。その後は一人で子どもたちを育てながら闘病を続けました。生活は知人や社会手当や寄付に頼って生活しています。最近結婚した長男が運転手をしながら何とか家族を支えてくれます。娘の一人も結婚しました。
2010年には良性腫瘍が見つかった子宮を取り除き、2014年には脳腫瘍も摘出しています。これまでにかかった治療費や病院への交通費は近所の人に借りてきたため、返済しなければならないお金もたまっています。WHCには経済的な支援や治療面だけでなく、子育ての相談もしてきました。乳がんになっても他の母親たちと違わないこと、子どもたちにどう接するかを教えてくれました。
一番悲しかったのは夫が去ったことです。しかし子どもたちに囲まれて生活し、彼らも母親に愛情や思いやりを持って成長してくれたことはとても幸せでした。また、WHCのリクリエーション、イベントなど、他の患者と交流できる集まりに参加することをとても楽しみにしています。