レバノンのブルジシェマリ難民キャンプで出会った6歳半の女の子、シードラちゃん。
故郷シリアで戦火が激しくなる中、お母さん、おばあさんと一緒にレバノンに避難してきました。
シードラちゃんはシリアで爆撃にあい、全身に大けがを負っていました。

シードラちゃんとの出会い

シードラちゃんは2013年6月、シリアのセットゼイナブ(パレスチナ難民キャンプ)からレバノンに避難してきました。
出会った時、シードラちゃんはまっすぐ歩く事が出来ませんでした。左手の中指も折れ曲がっていました。シリアでお母さんと歩いている時、突然、爆撃に見舞われたのです。その後、満足な治療を受けられないまま、痛みと後遺症が残りました。3日後、「実家に行く」と言って出かけたお父さんは行方不明のままです。

レバノンでは、コンクリートむき出しのトイレもない狭い部屋で、たくさんの親せきと一緒に暮らしていました。怪我のことでいじめられるため、シードラちゃんは友達もなく、一人ぼっちで家に閉じこもっていました。 そんなシードラちゃんを見て、お母さんも毎日のように泣いていました。

支援の開始と手術の実施

私たちは、シードラちゃんが病院で治療を受けらるよう、関係機関を回りました。
お母さんはパレスチナ人ですが、お父さんはシリア人なので、UNHCRに登録し、提携下の病院で指の手術を受けることが可能になりました。診断の結果、(1)中指の切断と縫合手術、(2)骨折した膝の理学療法、(3)歩行シューズを使った歩行訓練が必要になる、とのことでした。
しかし、生命に係わるケースではないということで、手術の費用は一部しか支給されず、自己負担が求められました。
費用を支払うことができない家族の代わりに、当会の支援で手術を行う事になりました。

「日本の皆さんありがとう」

手術の時シードラちゃんはとても勇敢でした。「お母さんがついてなくても大丈夫」と言って、自分の手が手術される様子を見ていたそうです。手術後の指は付け根を縫い合わせた後が痛々しい状態でしたが、本人はきれいになった手を見て嬉しそうに目を輝かせていました。近所の子どもとも一緒に遊ぶようになりました。その姿は別人のようでした。
泣いてばかりだったお母さんにも、おばあさんにも笑顔が戻ってきました。誰からも見放されていたと思っていたところに当会との出会いがあり、ソーシャルワーカーや国連の支援も受けられた。そういうつながりを実感できたのでしょう。家族みんなが希望を感じるようになったのだと思えました。

リハビリの開始と小学校入学

手術の後、装具を着けた歩行訓練が始まりました。シードラちゃんは毎週2回、痛みをともなうリハビリをがんばって行いました。
国連の小学校にも通えるようになりました。幼稚園に通ったことがなかったので少し不安はありましたが、お母さんが教えたり、当会が一緒に活動する現地NGOのスタッフからアドバイスをもらったりして勉強しました。
心理サポートクラスにも参加しました。絵を描いたり歌を唄ったり、みんなで絵の具を手のひらにつけて、大きな画用紙の上に手形を付けるワークショップも行いました。手術跡の残る手を見られることを気にしたり、うまく絵筆を持てないのではないかと心配しましたが、他の子が協力しあっているのを見ながら一生懸命色塗りを続け、「きれいな絵が描けた」と嬉しそうにしていました。

「ベイルート国際マラソン大会」への挑戦

ベイルートで毎年開催される中東最大のマラソン大会、「ベイルート国際マラソン」。
当会では走ることを通じてあきらめない心や協調性を身に付けてもらいたいと、参加を希望するシリア難民の子どもたちの出場を支援していました。
そのマラソン大会に、手術から4ヵ月が経過したシードラちゃんも挑戦したのです。
2013年秋、4ヵ月前まではまっすぐ歩くことも出来なかった彼女は、足を引きずりながらも最後まであきらめることなく、1kmのコースを見事に完走しました。隣には満面の笑顔で娘を見るお母さんの姿がありました。

現在、シードラちゃんはたくさんの友だちに囲まれて、毎日笑顔で学校に通っています。

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シードラちゃんのその後

シードラちゃんは2014年にもベイルート国際マラソンに出場しました。

この年はシードラちゃんの他にも33人の子どもたちが参加しましたが、シードラちゃんの姿に勇気づけられたという子どももたくさんいました。

5キロのコースを走った子どもたちは、転んだ友達を助け起こしたり手をつないだりしながら助け合い、全員がゴールまで完走しました。父親をシリアで失い「こんなつらい目にあうなら、お父さんと一緒に死んでしまえばよかった」と作文に書いたマラックちゃんもゴールイン。「初めて自分のことを勇敢だと思った」と語ってくれました。

シードラちゃんのその後の成長と、「ベイルート国際マラソン2014」の様子は、サラームのバックナンバーでご覧ください。

シリア避難民支援 シードラちゃん、再びベイルートマラソンへ [サラーム No.101 2014.11.15] (PDF 1.02MB)
(「ベイルート国際マラソン2014」で走ったマラックちゃんや他の子どもたちの様子はNHKのドキュメンタリー「NEXT 未来のために 走れ 泣くのはやめて シリア人難民キャンプ」として2014年12月に放映されました。)

(動画)


「シードラちゃんのおはなし」(8分30秒)
シードラちゃんとの出会いから、手術後、笑顔を取り戻すまでの様子が見られます。お母さんがお父さんとの出会いも聞かせてくれました。

「ベイルート国際マラソン2014」(8分30秒)
2013年に続き、シードラちゃんが再びベイルート国際マラソン大会に出場しました。その他、参加した子どもたちも、マラソン大会の前後で変わってきた思いを聞かせてくれています。