フェアトレード事業
パレスチナの民族衣装は見事な手刺しゅうで世界的にも有名で、大英博物館にも多くのコレクションが収蔵されています。
しかし、たび重なる戦争や難民生活の中で、女性たちは刺しゅうをする余裕も民族衣装を着る機会もなくなりました。
しかし今、その手仕事は難民キャンプの生活を支える技術となり、刺しゅうを施した小物やインテリアグッズ、
ドレスやバッグなどがつくられて、女性たちの貴重な収入源となっています。そして何より、
パレスチナ刺しゅうは彼らの伝統と誇りを受け継ぐ象徴として大切にされています。
私たちは、レバノンの難民キャンプとガザ「アトファルナろう学校」の工房で手作りされた刺しゅう製品を買い取り、
イベントやオンラインショップなどで紹介・販売しています。
パレスチナ伝統刺しゅうとは
女性の民族衣装は、襟から胸、袖、裾に施された豪華な手刺しゅうが特徴です。
古くは手織の麻や木綿に色糸で簡単な刺しゅうを施していたようですが、
19世紀以降は、外国文化の影響も受けて、模様も色も素材も非常に手の込んだものになっていきました。
伝統的な模様には花や木、星や月など生活の身近にあるものをデザインしたものが多く見られます。
例えば地中海沿岸にたくさん自生している糸杉は、特徴的なモチーフのひとつです。
同じものをデザインしても、町や村によって少しずつその形は異なり、
その人が身につけた衣装の刺しゅうを見れば出身地がわかると言われています。
レバノンの難民キャンプは、パレスチナ北部のガリラヤ地方や沿岸部の出身者が多く、
繊細で軽やかな色と柄が特徴的です。一方、ガザの向こう側、シナイ半島の先にはアフリカ大陸が広がり、
砂漠の遊牧民ベドウィンもガザにはたくさん住んでいます。「アトファルナ工房」で作られる刺しゅうは、
こうした風土を背景にしたビビッドなカラーが特徴です。
家族を守る女性たち
作り手の女性たちは、美しい文化を自分たちの手で守ることに誇りを持っていて、いつも目を輝かせて自分の作品について語ってくれます。
パレスチナでは、一家の働き手である男性を失った家族が多く、また場所によっては職業の制限もあって、
夫がいても収入が安定しない家庭が多いのが現状です。子どもを抱え、特別な技術も持たない女性たちが生計を立てるのはたやすい事ではありません。
そうした女性たちにとって、家にいながら空いた時間で作業ができる刺しゅうは、貴重で重要な収入の手段です。
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レバノン内戦で夫を旱くに亡くし、小さい4人の子どもを抱えて途方にくれていました。 でも刺しゅうの仕事ができたことで、何とか子どもたちを育てることがてきました。 辛く嫌なことがあったときでも、みんなで刺しゅうの仕事をすることで気晴らしができます。
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「アトファルナろう学校」で職業訓練を受けた後、刺しゅう工房で働いています。 新製品の最初の一つ目を作るときは少し不安になります。だけどそれを乗り越えれば大丈夫。 新しいものを作れるようになっていくのが嬉しいです。