ガザのいま

2018年ガザ

ガザのいま

数日前ヘッドラインを飾っていたガザやパレスチナのニュースですが、その続報が日本では見当たらなくなっていまいました。でもガザの状況が改善されているわけではありません。当会現地職員のガディールさんから現在の状況を聞きました。

「ガザとイスラエルの境界地域で、若者たちの抗議行動にイスラエルが実弾を発砲し60人以上という多くの死者が出ているのは、日本の皆さんもニュースでご存知だと思います。その中には子どもたちも含まれています。そもそも今回の抗議行動は非武装でした。

またこの地域は、イスラエルが一方的にパレスチナ人の立ち入りを禁じている広い場所(ガザの総面積の20%近い)ですから、狭いガザ地区に閉じ込められ移動の自由がない人たちの中には、この機会にピクニックやバーベキューなどを楽しんでいた家族連れが結構いました。そこに実弾が発砲されたわけです。

ガザでは人口の70%以上が難民です。つまり、イスラエルの建国で故郷を失った人たちですから、イスラエルとの境界地域に子どもたちを連れて行って、難民となった家族のヒストリーなどを伝えたいと考えています。特に今年の5月は、難民となって70年の節目ですから、とりわけその気持ちは強かったと思います。その当たり前の思いがこうした形で、大規模な犠牲者になったことはとても悲しいし、怒りを感じます。

ガザの病院では1000人を越える負傷者を収容できず、重症者もフロアにそのまま横たえられています。国連機関や保健省は医薬品の不足を訴えています。多くの医療NGOが現場にスタッフを派遣して救急に当たりましたし、病院で診療を受けられない人たちがNGOのクリニックにも来ています。2014年の空爆のときを思い出す凄惨な状況です。

ガザ内では相変わらず大規模停電が続いています。1日に4時間か5時間しか電気は使えず、燃料不足も深刻です。封鎖によって燃料など物資が入ってこないからです。ガソリンスタンドにも長い列ができました。14日や15日は公共交通も止まって、町は閑散とし、また大きな商店以外は全て閉まっていて、再び爆撃が始まるのではないかと人々の不安を掻き立てました。ガザの封鎖状況は全く変わっていないのに、多くの死者が出ないと外の世界が関心を持ってくれないのには失望を感じます。

16日から始まる予定だったラマダン(断食月)が17日からになったので、みなほっとしたのが実情です。ガザでは収入のある人が大変少なくなっています。公務員も月給を受け取っていません。ガザ政府(ハマス)の雇った公務員だけでなく、パレスチナ自治政府時代からの公務員まで給与が支払われなくなっているのです。NGO職員など給与がある人たちは、自分の家族だけでなく親戚一同を支えています。

封鎖のため、ガザ内で作られる野菜の価格には目立った値上がりは見られませんが、イスラエルからの輸入に頼る肉類は軒並み値上がりしています。普段よりもご馳走を食べるので子どもたちにとって待ち遠しいはずのラマダンですが、今年は多くの家庭で質素な食事しか並ばないと思います。また、小中学校の多くは学年末試験が終わっていたようですが、高校生の試験はまだ残っていますし、特にタウジヒと呼ばれる大学入学のための共通試験(その点数によって大学や学部がほぼ決まる)が来週ありますので、若者たちの将来を決める試験が混乱なく実施されるようにと思います。

14日に非常に多くの犠牲者が出たため、15日以降、国境地帯に向かった人たちは少なくなったと聞いています。18日の金曜日に大きな混乱と犠牲が起こらないことを祈っています。」  (5月16日)