レバノンの食糧危機

2022年

ウクライナの港から小麦の輸出がようやく始まり、最初の船はレバノンに向かっているという報道がありましたが、レバノンの食料事情がどれだけ深刻なのでしょうか。


レバノンでは、小麦の輸入の8割をウクライナに依存しており、また2年前の港の大爆発事故で食糧貯蔵庫が使用不可になったことで、小麦の輸入、流通と主要な食品であるパンの生産、供給に多大な影響が出ています。
2週間前から、政府の補助金が出ているパンを購入するために、毎日パン屋の前で長時間行列を作り待たなければならない状況が発生しています(写真)。山間部にあるパレスチナ難民キャンプでは、3日間にわたりパンが入手できなくなりました。


ベイルートの市民によると「5時間待つこともあります。これ以外に私にできることはありません。先週は3日間パンなしで生活した日もあったんです。」
パン屋の主人「16日前からこの大行列ができるようになっていて、武器やナイフを持ち出す人もいます。」


経済危機が発生して以降、レバノン国内では分断が進んでいます。当局はその要因の一つに人口の5分の1を占めるシリア難民の存在を挙げていることもあり、レバノン国内では難民に対するヘイトスピーチが増加し、シリアへ帰るよう呼びかける声も増えているのです。一部のパン屋がレバノン人にしかパンを販売しないケースや、店の前の行列をシリア人とレバノン人で分けるケースが報道されています。


大量のパンを買い占めてブラックマーケット(適正値段の2倍以上の値段)で売っているシリア人がいることから、「こういった状況の中で優先されるのは『レバノン国民』です」とのある県知事の発言も、分断を激化させるのではと危惧されます。

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